研究概要 |
1.アフリカイネ(Oryza glaberrima Steud.)の分布に関する農業気候学的検討 西アフリカにおける気候,特に降雨の特徴について解析を行い,この地域では緯度の増加に伴って,年降雨量/蒸発量比は指数関数的に減少する関係があること,さらに降雨量の変動係数もまた同様に大きくなることを明らかにした。これらに対応するように,イネの収量変動も緯度の増加に伴って増大した。O.glaberrimaおよびその野生祖先種O.breviligulataは,そのような苛酷な条件の下で,それぞれO.sativaおよび他の野生稲種(例えばO.longistaminataなど)に対する重要性あるいは優位性を増す傾向が見受けられた。 2.土壌水分に対するアフリカイネ(O.glaberrima Steud.)の生育反応に関する作物生理学的検討 西アフリカ産のO.glaberrima,O.sativaの各々6系統ずつに日本の品種1系統(日本晴,O.sativa)を加えて,土壌水分に対するそれらの生育反応を比較した。土壌水分の減少に伴って播種から出穂までに要した日数が増加し,その程度はO.sativaよりO.glaberrimaのほうで小さかった。全乾物重(W)と土壌水分量(f)との間に,1/W=A/(f-fo)+A′(f-fo)+B(A,A′,B:係数)の式で表される好適曲線関係が認められた。O.glaberrimaは,好適土壌水分条件下における全乾物重が大きい反面,低土壌水分域での全乾物重および収量,さらに有効土壌水分の下限値(fo)がO.sativaより小さい傾向が認められた。穂重/全乾物重比は,西アフリカ産の両栽培種共に土壌水分の減少に伴って低下したが,その程度はO.glaberrimaのほうで大きかった。 これら両検討結果の差異は,O.glaberrimaの耐乾性評価のためには,根系の分布の違いなど生態学的観点からの検討が不可欠であることを示唆しており,光合成の測定結果もそれを暗示するものであった。
|