各種の公的機能を保有する市街化区域内農地の保全の必要性が論議されている中で、本研究は、その存在効果を解明するために、大阪府堺市を対象に、存在形態に基づいて市街化区域内農地の類型化を試みるとともに、存在形態と農地が持つ緑地機能(自然供給機能、微気象調節機能、景観形成機能、利用機能)の評価との相互関係を明らかにすることを試みた。その結果、各小学校区は農地の存在形態に応じて7つのタイプに類型化することができ、市街化の進行度合いが低い市街化区域周縁部から、市街化の進行度合いが高い市中心部へかけて、集積地区から分散地区、田地区から田畑混在地区、畑地区と分布していることが明らかとなった。農地の存在形態と各種の機能に対する評価との係わりを捉えると、マイナス面はほとんど評価されず、プラス面が積極的に評価されていることが明らかとなった。各機能別の評価では農地の存在形態に係わらず自然供給機能が全般的に高く評価され、中でも、季節感の創出に対して最も評価が高く、景観形成機能の中の広がりや解放感に対しても同程度に評価されていることが明らかとなった。次いで微気象調節機能が全般的に高く、利用機能の中の子供の遊び場としての利用が同程度に評価され、景観形成機能の中の審美性と利用機能の中の避難場所としての機能が続いて高い。農地の存在形態の違いによる評価の差は、避難場所としての利用を除き、田集積地区が全ての面で評価が高く、田分散地区が続いて高いことが明らかとなった。畑分散地区の評価は最も低いものであった。ただし、夏の微気象調節機能に関しては、田分散地区の評価が最も高く、避難場所としての利用においては、畑集積地区の評価が最も高い傾向にあった。以上農地の存在効果を存在形態の異なる農地の緑地機能の評価といった観点から細部に渡り明らかにでき、今後の市街化区域内農地の保全を図る上で重要な基礎的知見を得ることができた。
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