研究概要 |
イネ科植物根より分泌れる鉄輸送物質ムギネ酸類(MAs)の生合成経路について以下の実験を行った。 1.人工気象室内で水耕鉄欠栽培したオオムギの分離根を、解糖系の中間体であり、ヘキソキナーゼの阻害剤であるglucose-6-phosphata(G-6-P),1mMと、^<14>C(U)-glucose(Glc),(185kBq,10muM)に調整した培地に浸し、通気条件下2時間培養した。同様に、G-6-P非処理区を設け対照区とした。投与後、根よりアミノ酸画分を分画し、MAsと各アミノ酸への^<14>Cの取り込みをHPLC-radio analyzerにより調べた結果、Glcの^<14>CのMAsへの取り込みはG-6-P処理区で対照区の6-8割であるのに対し、他のアミノ酸への^<14>Cの取り込みは1/2以下に減少した。 2.^<14>C-G-6-P、^<14>C-glucose-1-phosphata(G-1-P),(185kBq,10muM)を同様の方法でオオムギ根に2時間投与し、^<14>C-Glcの結果と比較した。その結果、^<14>C-GlcからMAsとアミノ酸類への^<14>Cの取り込みが見られるのに対し、^<14>C-G-6-P、^<14>C-G-1-PからMAsへの取り込みは微量であった。 3.解糖経路の生産物であるピルビン酸(Pyr)の^<14>Cの標識化合物(185kBq,10muM)を同様に根に投与し、^<14>C-Glcのデータと比較した。その結果、^<14>C-Glcの^<14>Cは、MAs、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アラニン(Ala)に主に取り込まれたのに対し、Pyrの^<14>CはMAs、Alaに取り込まれず他のアミノ酸類に取り込まれた。 TCA回路の中間体であるオキサロ酢酸、リンゴ酸(各1mM)を、^<14>C-Glc(185kBq,10muM)と同時に投与し、^<14>CのMAsへの取り込みの変動を調べた結果、^<14>C-Glcの^<14>CのMAsへの取り込みが増加した。 これらの結果は、Glcがリン酸化され解糖経路とTCA回路を経てMAsへ合成されることに否定的であり、又、MAs合成経路でAlaが副製する可能性を示唆している。
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