研究概要 |
イネ培養細胞におけるゴルジ複合体構成膜タンパク質の局在化のメカニズムを解明するために、平成5年度は以下のような研究を行った。 1.ゴルジ体膜からのピ-ナッツレクチン認識糖タンパク質(PNA-GP)の精製:グリセロール密度勾配遠心分離法を用いてイネ培養細胞のミクロソーム膜画分よりゴルジ体膜を単離し、SDS-PAGEによって31kDa、29kDa、23kDa、及び21kDaのPNA-GPを分離、精製した。21kDaのPNA-GPに対するポリクローナル抗体を作成し、その特異性を調べたところ、1M NaC1存在下においては23kDaと21kDaを、0.5M methy1-alpha-mannoside存在下においては21kDa PNA-GPを特異的に認識することが分かった。この結果は、23kDaと21kDa PNA-GPのN-結合型糖鎖の構造は類似しているが、ポリペプチド鎖は異なることを示している。2.PNA-GPの糖鎖構造と生合成に関する検討:PNA-GPは、PNAによって認識され、アルカリ処理及びO-グルカナーゼ処理によってPNA認識糖鎖の切断が起こることから、PNA-GPはO-結合型糖鎖を有していることが強く示唆された。さらに、PNA-GPの生成及び局在化に及ぼすBrefeldin A、Monensin、及びTunicamycinの影響を調べたところ、Brefeldin Aによってそれらは阻害されるが、MonensinとTunicamycinでは阻害は見られなかった。この結果から、このO-結合糖鎖はゴルジ複合体のシスコンパートメントで生成が始まることが示唆された(PCP(1993)34,855-863)。3.PNA-GPの遺伝子構造に関する検討:イネゴルジ複合体構成膜タンパク質の中で比較的含量の多いPNA-GPのポリペプチド鎖を特異的に認識する抗体が調製できたので、PNA-GPのcDNAクローンの調製及び構造決定を現在進めている。
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