マクロファージが産生する腫瘍壊死因子(TNF)は活性を有する膜結合型の前駆体として細胞表層に出現した後、プロテアーゼによる切断に伴い分泌されるが、そのプロセシングの分子機構の詳細は不明である。 本研究では、このTNFのプロセシングの初期段階であるTNF前駆体の小胞体膜通過・膜局在化の分子機構の解明を目的として、76残基から成るTNF前駆体領域についてPCR法等を用いた部位特異的変異体作製法により種々の欠失変異体を作製し、犬膵臓小胞体膜を用いたin vitro転写・翻訳系により小胞体膜通過・膜局在化を検討することにより、TNF前駆体領域中の小胞体膜通過・膜局在化に直接関与する領域の検索を行ない以下の結果を得た。 1)TNF前駆体の小胞体膜通過・膜局在化は前駆体領域中のN末端側領域(-76〜-31)のみで生ずる。 2)この領域中の-58、-57位(Lys残基)、-49、-48位(Arg残基)の陽価電のクラスター、さらにそのN末端側に存在する荷電性アミノ酸は小胞体膜通過・膜局在化には必須でない。 3)これに対してこの領域中に存在する16残基から成る疎水領域(-46〜-31)は膜通過・膜局在化に必須であり、この領域中のアミノ酸残基の欠失により小胞体膜通過・膜局在化は完全に阻害される。 以上の結果から、TNF前駆体では、-46〜-31に存在する疎水領域がinternal signal anchor sequenceとして機能し、II型の膜結合型TNFを生ずるものと推定された。
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