農作物の病虫害に対する生物学的防除法の開発は、現代農業における大きな課題である。この問題の解決に近づくために、遺伝子操作技術を用いて土壌微生物に有用遺伝子を導入しこれを利用することを計画した。有用遺伝子の担い手としては、土壌中で繁殖力が強く、かつ遺伝子操作可能な非病原性の糸状菌フサリュウム・オキシスポラムを選んだ。また、発現量が多く、それを調節することができる遺伝子システムとして、銅の存在によって誘導され銅と結合するタンパク質、メタロチオネインを選んだ。研究の第一段階として、フサリュウム・オキシスポラムのメタロチオネイン遺伝子をクローニングすることを試みた。そのために先ず、すでにクローニングされ塩基配列が決定されている糸状菌ノイロスポラ・クラッサのメタロチオネイン遺伝子を参考にして、23merのオリゴヌクレオチドプローブを作製した。このプローブを用いて、フサリュウム・オキシスポラムのゲノムDNAとサザンハイブリダイゼーションを行なった。その結果、合成したプローブは約3.5kbpのEcoRI断片とハイブリダイズすることが明らかとなった。そこで、約3.5kbpのEcoRI断片をプラスミドベクター(pUC18)に組み込んだ後、大腸菌(JM109)を形質転換させることによってDNAライブラリーを作製した。現在、このライブラリーからコロニーハイブリダイゼーションによりメタロチオネイン遺伝子断片を含んだプラスミドを持つ大腸菌のスクリーニングを行なっている。
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