まず、従来の微視力学的な細胞モデルを、新たに二次壁外層(S1)を有するモデルへと発展させた。そして、従来から我々が提唱している仮説("統一仮説"、奥山ら(1993))を細胞モデルに適用することにより、二次壁(S1+S2)の成熟(木化)に伴う細胞の自由寸法変化を与える式(時間に関する微分方程式)を導出した。そして、樹木生化学における知見(藤田稔ら(1978))や顕微鏡レベルでの形態学的特徴の実測結果に基づいて、方程式中のパラメータを具体的かつ定量的に決定し、二次壁成熟に伴う細胞の寸法変化(観測的には巨視的な意味での表面成長応力解放ひずみに相当する)を具体的に計算した。得られた計算結果は、実測結果と詳細に比較された。 以上により、単一の繊維細胞壁に発生する成長応力(微視的レベルでの成長応力)を、繊維細胞の集合体としての樹木木部の発生する表面応力(巨視的レベルでの成長応力)に演繹できることが確認された。このことは、細胞壁における成長応力は、"統一仮説"に基づいて発生するということを裏付けている。
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