研究概要 |
木材の表面には微妙な明暗の変化,すなわち濃淡ムラが存在している.濃淡ムラは明暗の変化の境界が曖昧な“ボケ"であり,また,周期的・規則的でもなく,かといってランダムでもない“ゆらぎ"のある変化である.このように濃淡ムラは生物材料・木材ならではの視覚的特徴であり,木材の見た目の「自然さ」に深く関与していると考えられる.そこで濃淡ムラを数量的に表現するのに必要な装置系や演算手順について検討した. 1.本研究では画像処理・解析法を応用する.そのために組んだ装置系は,パソコン,イメージスキャナ,フレームメモリからなる安価でシンプルな構成であるが,所望の解像度,精度,計算速度を得るのに十分であった. 2.“ゆらぎ"を表現するのに,パターンの空間周波数解析(パワースペクトル解析)がよく行われる.本研究でもこの解析を試みたが、パワースペクトルは低周波数領域の解像度が悪い,位相に関する情報を反映しない,などの理由により,これだけから濃淡ムラの「自然さ」に効く視覚物理量を抽出することは困難であることがわかった. 3.入力画像を水平方向に走査して明度変化プロフィールを得る→平滑化処理により濃淡ムラのみの明暗変化を抽出し,変化の山(明)と谷(暗)を検出する→隣接する山と谷の明度差(局所的明暗コントラスト)の平均値・最大値・変動係数や変化の頻度を求める,という新しい画像解析手法を考案した.得られた視覚物理量と,心理実験で得られた「自然さ」の心理量との重回帰分析を行ったところ,寄与率73%の「自然さ」に関する予測式を得ることができた.
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