1.シロクローバのクローンをさらに高精度で識別するために、従来の方法を改良した。新たにポリアクリルアミドゲル電気泳動法によりシキミ酸脱水素酵素とアルコール脱水素酵素の多型を検出し、シロクローバ品種内の変動性の極めて高いことを確認した。従来利用してきた酵素種とこれら2酵素を組み合わせることにより、さらに高精度でクローンを識別できるようになった。上記の識別法により、シバ-シロクローバ共存草地におけるクローンの挙動を分析中である。 2.同共存草地からシロクローバ個体を多数収集し、標準環境下でその特性評価を行った。特にシバとの共存に関わる特性として、体制形質、種子繁殖形質、物質配分形質に着目し、詳細な分析を行なった結果、光をめぐる競争に有利と推定されるタイプ(戦略)、生育空間をめぐる競争に有利なタイプ、種子繁殖に秀でたタイプなど、集団内に多様なタイプの存在することが確認された。さらに、種子集団の分析から、パッチ間、パッチ内にいずれの形質にも極めて大きな遺伝変異の存在することがわかった。すなわち、同共存草地において種子繁殖によって多様なタイプがつねに集団中へ供給されていることが確認された。 3.「シロクローバの多様なタイプのうち、どのタイプがシバとの共存に有利であるか」という問題を検討した。各タイプにおける種々の制約を分析後、検討のフレームワークとしてメタ集団モデルを採用することにより、上記の問題にアプローチできることを見い出した。シバとの共存に有利なシロクローバのタイプはパッチの発生頻度に依存して変化する。言い換えると、シバ型草地に放牧される牛の頭数、滞牧期間によって、最適なシロクローバのタイプは異なる。
|