1.開花期のアルファルファ1番草を材料とし、これに乾物当り0、1.16、2.32及び4.64%のNaOHを噴霧した後、凍結乾燥あるいは加熱乾燥(60℃及び120℃)として試料を調製した。各試料についてアミノ酸分析を行うとともに、in situバッグ法によりルーメン内蛋白質分解率を測定した。得られた結果を数学モデルに当てはめて、蛋白質のルーメン内における消化動態を推定した。以下に示す結果をまとめ、投稿し、受理されている。 (1)アミノ酸の架橋形成を示すリジノアラニンの生成は、加熱温度及びNaOH処理量が高くなるに従い増加した。その生成量は各処理に対して用量依存的であったが、NaOH処理よりも加熱処理の方が影響が大きかった。 (2)蛋白質のルーメン内可溶性区分の割合は加熱及びNaOH処理いずれによっても低下し、相対的に分解性区分の割合は減少した。分解速度も各処理によって低下したが、その効果は、NaOH処理よりも加熱処理の方が大きかった。 (3)リジノアラニン生成量と蛋白質のルーメン内分解速度の間に有意な負の相関関係が認められ、飼料蛋白質のルーメン内分解性低下に、アミノ酸の架橋形成が関与することが示された。 2.市販の大豆粕を用い、これに乾物当り0、2.5及び10%のNaOHを噴霧した後、80℃で乾燥してアミノ酸分析及び消化試験に供した。消化試験はルーメンカニューレを装着した山羊4頭を用いて行い、これまでに以下に示す結果を得ている。 (1)NaOH処理量が高くなるに従いリジノアラニン生成量は増加し、逆にリジン、トレオニン及びアルギニン量は減少した。しかし、これらを給与した山羊の窒素出納は改善される傾向を示した。 (2)NaOH2.5及び5%処理は蛋白質のルーメン内分解性を低下させたが、10%処理は逆に蛋白質の溶解性を高めることが示され、NaOHの適性処理量は乾物当り5%以下と判断された。 なおこれらリジノアラニンを含むアルカリ処理蛋白質の給与が、ルーメン内ペプチド代謝及び微生物態蛋白質合成に及ぼす影響については、引き続き検討していく予定である。
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