若齡子牛では、反芻胃の発達にともない、十二指腸へ移行する内因性窒素量が変化することが予想される。本研究では、第一胃内と第四胃内に注入する精製栄養素だけで飼育した若齡子牛を用い、第一胃から第三胃以降へ流出する窒素量を測定し、十二指腸へ移行する内因性窒素量に及ぼす要因について検討した。 試験には第一胃と第四胃にカニューレを装着したホルスタイン雄子牛3頭を用いた。子牛には、第一胃内へ窒素を含まない揮発性脂肪酸混合液、緩衝液および主要ミネラルを、第四胃内へカゼイン、微量ミネラル、ビタミンをそれぞれ4週齡から注入し、これらの精製栄養素のみで14週齡まで飼育した。注入栄養水準は維持の1.3倍とした・また、1頭の子牛については12週齡から第四胃内へグルコースを追加注入することにより、栄養水準を維持の1.6倍に高めた。6・8週齡(2頭)および12・14週齡(グルコース注入した1頭)において指標物質を用いて第一胃内溶液量と第一胃からの流出液量を測定し、同時に測定した第一胃内溶液中窒素濃度をもとに、第一胃からの内因性窒素流出量を算出した。また、頸静脈血を採取し、血漿中尿素態窒素と遊離アミノ酸濃度を測定した。得られた結果は以下の通りである。 6・8週齢での第一胃からの窒素流出量は平均133mg/BW^<0.75>であり、8週齢(159mg/BW^<0.75>)の方が6週齢(105mg/BW^<0.75>)よりも多かった。グルコースを第四胃内注入した子牛(12・14週齢)では、第一胃からの窒素流出量は平均24mg/BW^<0.75>と少なかった。血漿中の尿素態窒素および遊離アミノ酸濃度はグルコース注入により低下した。そのため、第一胃からの窒素流出量と血漿中尿素態窒素および遊離アミノ酸濃度の間には有意な正の相関関係が得られた。以上のことから、第一胃から流出し十二指腸へ移行する内因性窒素量は、子牛の成長にともない変化するだけでなく、体内での窒素代謝の影響も受けるものと考えられた。
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