植物有用二次代謝物産や酵素を高生産させるために、増殖が極めて速いタバコ培養細胞(BY2)宿主中で導入遺伝子を効率よく発現させるシステムの構築を行った。遺伝子を発現させるプロモーターとして1)構成性高発現プロモーター、2)誘導発現プロモーター、の2種類を検討した。各研究成果は、投稿論文(裏面)および日本生物工学会大会、日本分子生物学会大会において発表。 1)構成性高発現プロモーター 当研究室において、以前に単離されたキュウリのアスコルビン酸オキシダーゼ遺伝子(Asol)のプロモーターが、キュウリおよびタバコ植物体で高い発現を示すことが明らかにされていたので、BY2における発現様式を解析した。発現量の指標として、これまで高発現とされているCaMV 35Sプロモーターとの比較実験を行ったところ、Asolプロモーターは、一過性発現で約5倍、安定形質転換体で同程度の発現活性を示した。さらに、高発現に機能する約30 bp のシス領域とこれに結合するタンパク質因子も同定され、植物細胞における遺伝子高発現機構の解析系としても今後の発展が期待できる。また、利用目的のために Asol プロモーター下流に目的遺伝子を挿入できるようなバイナリー型発現ベクターを構築した。 2)誘導発現プロモーター シロイヌナズナ由来の熱ショック遺伝子(HSP18.2)プロモーターが、BY2においても熱ショックによって誘導されることが、当研究室の予備実験で示唆されていた。そこで本研究では、その発現様式の詳細を解析した。その結果、最適誘導温度は37℃であり、熱ショックを与えた後2時間後に約1000倍の発現上昇が検出できた。また、この発現誘導は転写レベルで行われていることが明らかとなり、発現のON-OFF制御に染色体(クロマチン)構造が関わっていることを示唆する結果も得られた。
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