研究概要 |
蛋白質燐酸化および脱燐酸化反応によるエクソサイトーシスの調節の分子機構を明らかにすることを目的として、脱燐酸化酵素阻害薬であるオカダ酸(OA)およびカリクリン-A(CL-A)によるRBL-2H3細胞からのセロトニン遊離および蛋白質燐酸化反応について検討し、今年度は以下の結果を得た。OAおよびCL-Aの適用によりRBL-2H3細胞から遅発生で持続的なセロトニン遊離が惹起された。この遊離はOAおよびCL-Aの適用時間に依存性であり、外液Ca^<2+>濃度非依存性であた。OAおよびCL-AのED_<50>はそれぞれ1.2muMおよび15nMであった。CL-AがOAに比べて100倍強力であることから、この反応には1型蛋白質脱燐酸化酵素が関与していることが示唆された。OAおよびCL-Aによるセロトニン遊離は燐酸化酵素阻害薬であるスタウロスポリンおよびK-252aの前処置により完全に抑制された。同条件下において、CL-Aの適用によりRBL-2H3細胞において25,20,18,15,13および12KDaの蛋白質燐酸化反応の亢進が惹起され、これらの反応がスタウロスポリンおよびK-252aの前処置により完全に抑制された。これらの結果より、CL-Aによる1型蛋白質脱燐酸化酵素の活性阻害により相対的に燐酸化反応が優位となり、燐酸化された基礎蛋白質の蓄積によりセロトニン遊離が惹起されると考えられた。以上のことから非興奮時の細胞では伝達物質遊離反応の細胞内Ca^<2+>濃度依存性過程の下流において、1型蛋白質脱燐酸化酵素が緊張的に抑制をかけていることが示唆され、これは脱燐酸化反応によるエクソサイトーシスの調節の分子機構を明らかにする上で重要な知見であると考えられる。
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