研究概要 |
これまでにエンドセリンが虚血性脳神経細胞障害に関与していることを免疫組職化学的および定量的受容体オートラジオグラフィー法を用いて報告してきた。本研究は、脳卒中病変ないし虚血性脳神経細胞障害発現にエンドセリンが関与している証拠をより直接的に得る目的で、1.まず、エンドセリン-1(ET-1)を直接脳室内に微量注入し、神経細胞障害が発現するか否かを観察した。動物は全て脳卒中易発症高血圧自然症ラット(SHRSP)の10〜12週齢を用いた。1-1.ハロタン麻酔下、脳定位固定装置にラット頭部を固定し、一側の側脳室内に10pmo1/2mu1のET-1をマイクロシリンジを用いて注入した。注入後10分〜20分で全例にlongitudinal rollingを誘発した。7日後、摘出脳について脳薄切片を作成し、HE染色を行い光学顕微鏡にて観察した結果、海馬の一部および第3脳室周囲部の一部において神経細胞壊死が認められた。1-2.次に、ミニ浸透圧ポンプをラットに植込み、同様に一側側脳室内に5pmol/hrおよび10pmol/hrのET-1を7日間持続微量注入した。対照には人工脳脊髄液を同様に持続微量注入した。その結果ET-1は5pmol/hrでも海馬および視床に著明な組職変性が認められ、神経細胞の脱落およびグリア細胞の増加が認められた。2.一過性前脳虚血処置による海馬CA1錐体細胞の脱落が抗エンドセリン抗体を持続微量注入することにより抑制されるか否かを調べた。1-2,と同様にミニ浸透圧ポンプをラットに植込み、一側側脳室内に抗ET-1抗体および抗ET-3抗体の原液を人工脳脊髄液で20倍に希釈したものを0.5mu1/hrで持続注入した。植込み手術を行った翌日に、ハロタン麻酔下両側総頸動脈を10分間結紮した後、血流を再開通させ、7日後に脳を灌流固定し脳薄切片を作成した。その結果、一過性前脳虚血のよる海馬CA1錐体細胞の脱落は抗エンドセリン抗体では抑制されなかった。
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