研究概要 |
悪性黒色腫の浸潤、進展の過程における、癌周囲の細胞外マトリックスの変化、血管新生の程度、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の発現、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の発現を悪性黒色腫切除材料(皮膚原発:24例、粘膜原発:55例)、培養細胞株(HMV-I)を用いて検索した。 1.4型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸等の免疫染色を行って検討したところ、腫瘍浸潤部の細胞外マトリックス成分の増加は皮膚原発のものでは75%で明瞭であったのに対し、粘膜原発のものでは80%の症例で不明瞭であった。 2.血管新生の程度を第八因子の免疫染色、レクチン染色を用いて単位面積あたりで測定すると、粘膜原発のものでは平均38.0/mm2であったのに対し、皮膚原発のものでは25.7と低く、細胞外マトリックスの発達の程度とは逆相関を示した。 3.MMP、その阻害因子のTIMPの発現については、各因子に対するモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行い検討した。MMP-1,3は主として癌浸潤部周囲の間葉系細胞に、一部新生血管に、NMP-9、TIMP-1,2は癌浸潤部周囲の新生血管にそれぞれ発現しており、いずれも粘膜原発のもので発現が強い傾向があった。 4.bFGFの発現はモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行い検討した。培養細胞にはbFGFの発現は認められたが、組織では腫瘍細胞自体における発現はほとんど認められず、癌浸潤部のマトリックス増生部に一致して発現が認められた。 腫瘍細胞自体のbFGFの産生については、さらに_mRNAを用いたin situ hybridizationによって確かめる必要がある。増殖因子とマトリックス、血管新生の関係はヒト組織を用いてさらに検討する必要がある。
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