大腸の陥凹型腺腫(DA)、非陥凹型腺腫(NDA)、癌においてProliferating cell nuclear antigen(PCNA)に対する免疫染色により腫瘍の増殖活性について、癌抑制遺伝子として知られるp53蛋白に対する抗体を用いた免疫染色によりP53蛋白の腫瘍内発現について調べた。 PCNA標識率は、DA(43%)でNDA(29%)より有意に高く、癌(70%)よりは低いという結果が得られた。腺腫では腫瘍の大きさ、異型度とPCNA標識率は相関はなかった。また、腺腫ではDA、NDAともにPCNA陽性細胞は腫瘍の表層部に出現する傾向にあったが、癌では局在はなくび慢性に出現する傾向にあった。 p53の発現は、DA(54%)でNDA(21%)より有意に高率で、癌(48%)と同等であった。しかしDAでのp53陽性細胞は散在性かつ極少数のみであり、これはNDAと同様の発現様式であり、癌で見られたようなび慢性かつ多数の細胞に出現するようなものは認めなかった。 以上の結果からDAはNDAより増殖活性が高くp53蛋白の発現頻度も高いが、DAのPCNAおよびp53陽性細胞の分布様式はNDAと同様であることよりDAは腺腫の中でも癌化の危険率が高い"前癌病変"考えられる。
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