ヒト家族性ポリポ-シス症患者は、大腸内に多数のpolypが出現し、無処置の場合高い頻度で癌化する。発癌その後のプログレッション過程で特定遺伝子異常の蓄積が観察されることが報告されている。そこで、ヒト大腸癌のプログレッション促進因子の解析のために家族性ポリポ-シス症患者からのadenoma polypの培養株化とすでに樹立されている培養ヒト大腸癌細胞からの低悪性度癌細胞の分離を試みた。 平成5年5月より平成5年末までに北海道厚生農業協同組合連合会総合病院札幌厚生病院(村島義雄院長)消化器内科より計4例の患者(うち1例は大腸全摘出術)のpolypectomyより得たpolypからの培養株化を試みた。それらのうち最長56日間顕微鏡下で間質細胞と区別可能な細胞の生着を確認した。また、ヒト大腸癌株化細胞(KM-12)のクローニングを行うことで低悪性度の癌細胞を分離しようとしたが、これも最終的には得られなかった。以上の実験結果から、polypのような良性腫瘍や低悪性度の癌細胞の培養株化は、通常の培養条件では不十分であり、増殖因子の添加や細胞外マトリックスによるプレート表面のコートなどの工夫が必要であると考えられる。また、手術摘出試料から直接培養細胞を樹立することは困難であると判断できるので、ヌードマウスあるいはSCIDマウスに継代後培養株を樹立する試みも必要と考えられる。
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