研究概要 |
Wilms腫瘍の癌抑制遺伝子WTlは4つのzinc fingerドメインを有する転写因子をコードしている。WT1産物の構造上の特徴としてalternative splicingによって4つのzinc fingerのうち第3fingerと第4fingerのあいだにLys-Thr-Ser(KTS)の3アミノ酸があるもの(WT-KTS+産物)とないもの(WT-KTS-産物)が存在することが知られている。これまでWTl産物の機能としてKTS-産物がEGRl結合配列(GCGGGGGCG)に特異的に結合してこの配列をプロモーターに持つ遺伝子(IGF2,PDGF A chainなど)の転写活性を抑制することが報告されている。 我々はこれまで human fetal kidneyのcDNAライブラリーから、既に報告された2種類以外に第3zinc finger全体がspliceされたWTldelF3産物を単離した。WTdelF3産物はこれまでWTlにmutationのあるWilms腫瘍にのみ発現するaberrantな蛋白質と考えられてきたが、われわれはRT-PCR法により同産物が正常組織でも発現することを見いだした。さらにこの産物の機能を知る目的でその結合配列を検索したところ、EGRl結合配列とは異なる特異的な配列(GTGTGGAGT)に結合することが明らかになった。さらにこの配列をPDGFAchain遺伝子のプロモーターに組み込んでその転写活性をCAT assayで検討したところ、WTldelF3産物は転写活性を抑制性に制御することが分かった。
|