研究概要 |
フレンドマウス白血病ウイルス(FLV)に対する宿主の細胞反応の作用機構を探り、さらにウイルス誘発白血病に対する骨髄移植モデルを確立する目的で、以下の様な実験を行い成果を得た。1)FLVに感染後5日目のDBA/2(FLV感受性:Fv-2^5,H-2^d)マウスに致死量放射線を照射した後、C4W(FLV抵抗性:Fv-4^r、H-2^d)の骨髄細胞を移植して白血病発生の有無を検索した。その結果、C4Wの骨髄細胞を移植した場合には、多くの場合白血病は発生せず、骨髄移植を行なったマウスの寿命と考えられる400日以上の生存が65.5%のマウスで認められた。2)FLV抵抗性と感受性のマウスの間で種々の割合の混合キメラマウスを作製してウイルス感受性を検索すると、C4W由来細胞が混在していると70%以上感受性の細胞が存在してもマウスは抵抗性を獲得することが明らかとなった。この現象の機序を探るため、混合キメラマウスの血液細胞中のFv-4遺伝子産物の発現を検索した。その結果、混合キメラマウスの血液細胞では感受性マウスに由来する細胞も、本来持たないはずのFv-4遺伝子産物を発現していることがわかった。この発現はキメラマウス作製後、約1ヶ月目頃に最も強くなっていること、混合されている細胞の内、C4Wに由来する細胞の比率が高いほど、感受性細胞表面のFv-4遺伝子産物の発現も強いことが明らかにされた。この事は、C4W由来細胞から何らかの形でFv-4遺伝子産物が遊離され、さらに感受性細胞の表面にあるウイルスレセプターに結合している可能性を示唆している。C4Wマウスのウイルス抵抗性発現の機序として、ウイルスレセプターにFv-4遺伝子産物が結合してしまうために、ウイルスが結合できないというメカニズムが考えられており、今回の結果はそのモデルに合致した所見と考えられた。さらにこの現象の機序を詳しく解析し、骨髄移植を用いたレトロウイルス感染の治療実験に応用する予定である。
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