研究概要 |
全世界で今尚下痢症にり患する5歳以下の小児は7〜10億に達し、その内500〜1000万人が死亡している。その下痢原因菌として毒素原性大腸菌(ETEC)が20%を占める。ECECは下痢毒素LTを産生し、毒素のワクチン開発は急務とされている。そこでワクチン開発及びLTを用い他の抗原物質の抗原性の発揮の手助けをするキャリアー蛋白質の開発に寄与するため本研究を企画し、LTのAサブユニットのN末端のアミノ酸がホロ毒素形成にどのように関与をしているか、アミノ酸欠損株を作成することにより解析してきた。その結果まず、N末端のアミノ酸を数個保存することにより、Aサブユニットが分泌されることを明らかにした。さらにこのアミノ酸を保存して5、10、30、40、100個のアミノ酸を遺伝子操作により欠如させ、抗原性の変化、ホロ毒素形成の変化を解析した。その結果N末端より1〜5、5〜10、10〜100位のアミノ酸が抗原決定基に関与することを明らかにした。さらに6〜9位のアミノ酸を欠損させることにより、変異Aは産生されるが、ホロ毒素は形成されないことが明らかになった。一般にA,BサブユニットはAのA2フラグメント(192〜243位)により会合していると考えられている。これ以外に146位のArgがBと接触していると報告されている。しかし結晶解析結果によれば、6〜9位のアミノ酸はBサブユニットより離れた位置に存在し、ホロ毒素形成には関与していない。 従って、これらの結果はN末端アミノ酸が出来上がったホロ毒素の形成に関与するよりは、むしろホロ毒素の形成段階に関与している可能性が示唆される。
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