胎生期造血における受容体型チロシンキナーゼFlk-2の役割を解析するために、Flk-2に対するモノクローナル抗体の樹立を試みた。まず、抗原として用いるFlk-2発現細胞株を作成した。マウスflk-2の細胞外及び膜通過領域とヒトc-erb-B-2の細胞内領域を連結したキメラ遺伝子をラットミエローマ細胞株Y3に導入し、抗c-Erb-B-2抗体(CB-11)を用いたウェスタンブロット法によりキメラ蛋白を発現するクローンを選択した。得られた細胞株Y3/FEB1-2の細胞溶解液からはCB-11で180Kdと160Kdの2本のバンドが検出された。親株Y3はc-erd-B-2、flk-2ともに発現していない。Flk-2とリガンドの結合を阻害する抗体の樹立が目的であるため、リガンドの結合によるFlk-2の自己リン酸化を検出する系が必要である。Y3/FEB1-2をストロマ細胞PA6で刺激し抗リン酸化チロシン抗体でリン酸化蛋白を解析したところ、未刺激の細胞でも80Kdの蛋白のリン酸化がみとめられ、PA6の刺激による昂進はなかった。親株にはこのリン酸化蛋白は検出されないので、180Kd蛋白は細胞膜に発現した機能的なキメラ蛋白であると推測される。ごく最近、Flk-2のリガンド遺伝子がクローニングされたので、今後はこれも利用できる。Y3/FEB1-2を免疫したラットの脾細胞をX63Ag.8に融合させ、Y3/FEB1-2を認識するがベクターのみを導入した細胞株を認識しないことを指標にしてハイブリドーマ上清をスクリーニングし、2種のクローンを得た。しかし、Y3/FEB1-2の溶解液を用いたウェスタンブロットによりいずれも200Kd以上の蛋白を認識することが示され、目的とする抗体ではないことがわかった。現在はヒトIgGとFlk-2とのキメラ蛋白を精製して免疫する方法なども試みている。以上のように目的の抗体樹立はまだ達成されていないが、いくつかの細胞株や実験系が確立してきており今後の継続的な研究による成果が期待できる。
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