本実験においてマウス胚細胞は交尾後6.5日から8.5日までの物を用いた。in vitro実験系では、頚椎脱臼法により屠殺した実験動物を、実体顕微鏡下で無菌的に胚細胞を取り出し培養を行った。 培養液はEagleのMEMに10%の牛胎児血清と、5mug/mlの5-Bromo-2′-deoxy-uridineを加えたものを用いた。胚細胞をマイトマイシンC(MMC)投与群と非投与群の2群に分け、投与群には100ng/mlのMMCを加える。両群を24時間光を遮断したCO_2インキュベータで培養後、低張処理を行い、1:3の酢酸とメタノールの混合液で固定した。固定した胚は染色体標本とするまで-20℃の冷凍庫で保存する。染色体標本は胚を70%酢酸で1〜2分処理した後、酢酸とメタノールの混合液に戻し、空気乾燥法で作成した。観察された姉妹染色分体交換(SCE)はコンピュータで統計学的に処理した。 in vitro実験系では100ng/mlのMMCにより誘発されたSCE頻度は6.5日、7.5日、8.5日胚においてそれぞれ、1細胞当たり28.5±4.2、37.1±4.5、35.1±4.6であった。 この実験結果と我々がこれまで得たin vitro実験系と比較すると、以下のことが示唆される。 1.in vitro実験系において、MMCにより誘発されるSCE頻度はin utero実験系の約50倍である。 2.このMMCを用いた二つの実験系では、共に6.5日胚より7.5及び8.5日胚で統計学的に有意に多くのSCE誘発が観察された。 しかしながら二つの実験系には、変異原物質投与後の処理時間の差、またその間に進む胚の発生および分化の違いがあり、両者を比較するには慎重な検討が必要である。今後もさらなるデータの蓄積、研究を進める必要性がある。
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