研究目的:個人の口腔機能に関する意識と臨床所見との関連を見いだし、歯科におけるクォリティーオブライフとは何かを考え、歯周治療の新たなゴールを求めることを目的とする。 研究方法:20-44歳の健康な成人376人について、プラーク指数、ポケット、アタッチメントレベルなどの臨床検診を行い、各個人の平均値およびCPITNを算出した。また、咀嚼能率ガムを50回咬ませた後、色彩色度計にてガムの色の変化を測定し、個人の咀嚼能率を色度で表した。さらにパノラマX線写真による齲蝕、欠損歯、骨吸収の判定を行った。日常の意識調査としては、口腔衛生習慣、喫煙などの他、歯周病に関係すると思われる18項目についてアンケート調査を行った。 研究結果: 1.自覚症状と各臨床検査との関連 自覚症状『あり』と回答した数と年齢、および臨床検診における各個人別平均値との間に有意な相関が認められた。 2.CPITNとの関連 CPITN2、3と4を基準として、自覚症状18項目のうち6項目以上『あり』と回答したものを重症とした場合、感度0.68、特異度0.67であった。 3.パノラマX線写真との関連 咬合痛に関する項目は、齲蝕や欠損に影響を受け、また、要抜歯とされる高度な骨吸収を有するものは、咬合痛の症状を必ず有していた。 4.咀嚼能率 咀嚼能率は骨吸収とは相関せず、欠損歯の数に依存していた。 今回の研究において、自覚症状(日常の意識)は臨床所見とかなり相関を示していた。現在、特に日常生活に影響を与える臨床症状はどの程度のものであるか、さらに分析を進め、快適な日常生活を送るためのゴールを設定する予定である。
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