研究概要 |
蛍光色素標識塩基配列決定法の法医学的応用について以下の検討を行った。 1)4塩基対STR部位について塩基配列決定法による正確なサイズ測定法を試みた。多型性領域として既に報告のあるACTBP2,HUMTHO1(TC11),D11S488の3領域について検討した。各領域を増幅する2つのプライマーの5′末端部にそれぞれ-21M13配列とM13 reverse配列をつけたプライマーを作製しPCRを行った。PCR増幅産物をポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分離後、切り出した。精製後、PCR増幅産物をtemplateとしてdye terwminator法により蛍光色素標識し、sequencerにて塩基配列を決定した。この方法によって得られた増幅産物のサイズはポリアクリルアミドゲル泳動後、銀染色によって検出したサイズとよく一致していた。 2)MCT118(D1S80)領域について塩基配列決定によるサイズ測定を試みた。MCT118の増幅産物は4塩基対STR部位に比べ、サイズが大きいためdye terminator法よりdye pri-mer法の方が優れていた。また、繰返し回数の多いalleleでは完全な塩基配列を得ることができない場合もあった。 蛍光色素標識塩基配列決定法による短fragment(microsatellite等)のサイズ決定は非常に正確であり、法医学領域においても有用であると考えられる。またdye terminator法には多検体を同時に処理できる利点もある。欠点としては通常のサイズ決定法に比し、手順が多いことと長いfragmentの解析が困難であることであるが、fragment自動解析ソフトウェアの使用によって、今後はこの欠点も克服できると考えられる。
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