死因が心臓疾患ではない4剖検例(48〜77歳の男女各2名)について、洞房結節の組織標本を作製し、洞房結節細胞面積及び線維化面積を定量した。組織染色はアザン染色並びにキリジンポンソ-・ライト緑染色を行ったが、今回の場合、アザン染色した標本が最もコントラストが鮮明で、画像解析に適することが判明した。 組織標本は倍率150倍でカラー写真撮影した。この倍率では、3画面で洞房結節のほぼ全体を撮影出来た。カラーイメージスキャナーにより、結節の写真をカラー画像解析装置に入力した。まず、血管部分を消去、色変換フィルターによって緑要素を消去した。続いて、色濃度階調の縮小とコントラスト強調を行った後、2値画像に変換した。赤・青・緑の各色要素につき256階調で表示されていた原画像を2値画像に変換することにより、組織像は最終的に、心筋が赤、線維が青、線維間隙が黒の組み合せで構成され、面積計測が可能となった。一症例あたり3画面の各々について計測し、以下に挙げた伊藤らの計算式で算出した面積比の平均値を洞房結節細胞面積比(%)とした。#洞房結節細胞面積比=洞房結節細胞面積÷(洞房結節細胞面積+線維化面積) 4例の洞房結節細胞面積比は、48歳女 36.9%、54歳男 29.0%、68歳男 25.6%、77歳女 22.4%であった。年齢(x)と洞房結節細胞面積比(y)との一次回帰直線はy=55.73-0.44x(r=-0.935)であり、洞房結節細胞面積比は年齢と有意に相関していた。これら4例には心疾患の病歴はなく、刺激伝導系障害のない症例と考えられるので、生理的老化による洞房結節細胞の現象を示す対照群になると考えられた。今年度は、解析に適当な青壮年心臓性急死例の洞房結節の組織標本が得られなかったが、今後症例が得られ次第、解析する予定である。
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