本研究では、HIV感染におけるHIV外被糖蛋白gp120の役割を検討し、gp120による細胞死の系を確立し、この系を用いてHIVによる細胞死を抑制する薬物の検討を行った。 HIV-gp120の細胞に及ぼす影響について、我々の研究で明らかとなった点について以下にまとめた。 1)gp120は、マクロファージ/CD4に結合する事によってIL-6、TNF-alphaなどを産生する。 2)主に、マクロファージから産生されたサイトカインによってB細胞から多クローン性にイムノグロブリンの産生が誘導される。 3)同様にT細胞もマクロファージからのサイトカインによる刺激とT細胞/CD4へのgp120によるシグナルによって、T細胞は活性化を受けHLA抗原の出現、IL-2産生の低下など、T細胞のアネルギー状態となる。 4)T細胞へのgp120の結合に引き続き抗T細胞レセプター(TCR)抗体の刺激を加えることによってT細胞死=apoptpsisが誘導される。15EA07:5)こうした系での細胞死は免疫抑制剤FK506によって抑制される。 現在までHIVの発症抑制に決定的に有効な薬物はないが、FK506はHIV感染そのものは阻止しないが、感染後の細胞死は阻止する可能性があり、実際、移植後HIV感染者に移植後FK506と類似のサイクロスポリンを使用した群でAIDSの発症が抑制されたとの報告がある。In Vivoでの有効性の確認のためにSIV感染サルを用いてFK506の投与実験を検討中である。
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