気管支喘息の病態形成に重要であるIgE抗体産生は、各種のサイトカインによって制御されている。一方、気管支喘息の病態は妊娠の前後で変化する事、また小児喘息が思春期にアウトグローという自然治癒を起こすという興味ある現象が存在する。そこで第一に卵胞液から分離され、種々の血液細胞にも作用する事が明かになったアクチビンAのIgE抗体産生に対する作用を検討した。アクチビンAはIgE抗体産生を増強するが、これは単球のIL-6産生を介する増強効果である事が明かになった。この事は、妊娠中に気管支喘息が悪化する症例の機序を知る糸口となる事が示唆された。 次にダニ抗原特異的T細胞株を作成し、サイトカイン産生性の制御機構を解析し、病態を修飾する事を試みた。アトピー性気管支喘息患者の末梢血リンパ球より、ダニ抗原特異的T細胞株を限界希釈法を用いて作成した。サイトカインの産生はRT-PCR法により検出した。得られた細胞株は、ダニ抗原特異的に増殖し、IL-4、IL-5、IL-6を産生し、IFN-gammaを産生しないTh2型のサイトカイン産生性を示した。しかし、このクローンをPMA+抗CD3抗体で刺激を加えるとIFN-gammaおよびIL-2も産生するTh0型のサイトカイン産生パターンを示した。この事はダニ抗原刺激ではTh2型サイトカイン産生性を示すが、Th1型サイトカインを産生する潜在能力も保持しており、この潜在能力を生体内で誘導できれば治療につながると示唆された。さらにアウト-グローした患者のダニ抗原特異的T細胞株のサイトカイン産生性について検討を勧めている。
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