研究概要 |
炎症性腸疾患患者の中でもクローン病に於いてしばしば、マイコバクテリウムがその腸組織の長期培養から同定されたり、或いはマイコバクテリウムに対する患者血清中の抗体価よりクローン病に於けるマイコバクテリウムの関与に関しては賛否両論存在している。 今回クローン病患者7人、潰瘍性大腸炎患者9人、コントロール11人から得られた大腸組織からDNAを抽出しマイコバクテリウムに特異的プライマーを用いてpolymerase chain reaction(PCR)を行った。PCRはdenature;94°C for 30 sec,annealing;55°C for 2 min,extension;72°C for 90 secの条件で33サイクル行った。 <結果> マイコバクテリウムを広く検出するプライマー(5´-GAGATCGAGCTGGAGGATCCGTA-3´,5´-GCGGATCTTGTTGACGACCAGGG-3´)をABI社製DNA合成機を使って合成し、これを用いてPCRを行い、できたサンプルをアガロース・ゲル電気泳動にかけサザン・ブロット解析を行った。その結果クローン病患者行7人中7人、潰瘍性大腸炎患者9人中8人、コントロール11人中10人に陽性であった。今回の実験ではマイコバクテリウムの中のどの菌種であるのかは特定できないが大多数の日本人の大腸には何らかのマイコバクテリウムが存在していることが判明した。又現在牛にクローン病と類似した病気をつくることで知られているMycobac-terium paratuberculosisに特異的とされるプライマー(5´-GTTCGGGGCCGTCGCTTAGG-3´,5´-GAGGTCGATCGCCCACGTGA-3´)を用いたPCRを、さらに母数を増やして検討しているところである。少なくとも、現時点でクローン病患者4人がM.paratuberculosis陽性であった。
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