研究概要 |
1)大腸粘膜内炎症性細胞におけるphenotypeとNBT還元能に関する検討 活動期潰瘍性大腸炎大腸粘膜内において炎症性浸潤細胞がNBT還元能を示すことをすでに報告しているが、これらの細胞の起源について検討した。 潰瘍性大腸炎及び健常コントロールから採取した生検材料を用いて、in situ NBT還元能及びphenotypeに関して、以下の抗体を用いて免疫組織化学的検討を行った。RFD1(Dendritic cells),RFD7(Tissue macrophages),RFD9(Epitheloid cells and tingible body macrophages),EBM11(Tissue macrophages),MCA672(HLA-DR)。その結果、活動期潰瘍性大腸炎においてはRFD9陽性細胞の割合が有意に増加していた。また、NBT還元能を有する細胞の一部がEBM11陽性であった。 2)活動期潰瘍性大腸炎大腸粘膜において血管内皮細胞がNBT還元能を有することをすでに報告している。近年、炎症巣における白血球の浸潤に関して、血管内皮細胞の細胞接着因子が注目されている。この細胞接着因子とNBT還元能を有する活性化された血管内皮細胞との関連を、以下の抗体を用いて免疫組織化学的に検討した。BBBIC-E6(E-selectin),15-2(ICAM-1),9G11(CD31),4B2(VCAM-1)。その結果、ICAM-1陽性血管内皮細胞は、潰瘍性大腸炎と対照の間に差はなかった・CD31は、潰瘍性大腸炎で増加していたが、組織学的炎症度とは相関せず、むしろangiogenesisを示すものと考えられた。活動期潰瘍性大腸炎では、E-selectin陽性の血管が増加しており、NBT還元能との間に何らかの関連が推定された。 これらの結果から、潰瘍性大腸炎において粘膜内macrophageの活性化と血管内皮細胞の活性化が粘膜障害に深く関与していることが示され、今後の治療法の開発に有用な知見と考えられた。大腸粘膜内におけるNBT還元浸潤細胞に関しては、EBM11陰性の細胞が少なからず存在し、今後これらの細胞の起源を検討することが重要と考えられた。
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