研究概要 |
本研究において我々は、陥凹を有する大腸表面型腫瘍の陥凹部の形態および陥凹部の腺管開口形態(pit pattern)に注目し、陥凹のいびつさを定量的に解析して、組織学的悪性度との関連性を検討した。対象は、内視鏡もしくは手術にて切除された陥凹の明らかな大腸表面型腫瘍(腺腫・早期癌)57症例60病変である。方法は、ホルマリン固定後の切除標本をカラチヘマトキシリン溶液で染色し、実体顕微鏡で観察し、画像解析装置(IBAS 2000,Kontron,Munich)にて腫瘍の陥凹形態の円形率(円で1.0、形に不規則な凹凸を生じて円から隔たるほど0に近づく量で、円形率=4pi・面積/周囲長^2により定められる)を測定して、そのいびつさを定量化した。このようにして得られた肉眼形態・pit pattern・組織型別の円形率の結果を次に示す。 1)肉眼形態 表面隆起型(IIa+IIc);0.535±0.199(M±SD)。表面陥凹型(IIc+IIa,IIc);0.501±0.171。両者間に有意差は認めなかった。 2)pit pattern IIIs;0.554±0.163、V;0.325±0.130で有意差を認めた(p<0.01)。 3)組織型 低・中等度異型腺腫;0.580±0.149、高度異型腺腫;0.485±0.200、癌;0.339±0.141で、低・中等度異型腺腫と高度異型腺腫の間には有意差は認めなかったが、両者をまとめた腺腫では0.543±0.173であり、癌と比較して有意差を認めた(p<0.01)。以上、画像解析装置を用いた大腸表面型腫瘍の陥凹形態の分析により、腫瘍の組織学的悪性度が高いほど、陥凹形態が正円から外れて不整形になることが示唆された。今後、これらの解析を内視鏡検査時にリアルタイムに行い、腫瘍の悪性度を数値化し内視鏡診断に利用することを検討している。
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