研究概要 |
本研究において、レチノイン酸(RA)による肝線維化に対する影響に関して検討した。 まず、初代培養および継代培養ラット伊東細胞に、all-transRA,9-cis RAを添加し、その増殖およびコラーゲン産生を検討した。10-8-10-6 MのRAでは、細胞増殖には有意な差は認めなかったが、コラーゲンmRNAの発現は抑制された。コラゲナーゼ産生に関しては抑制傾向を示した。樹立伊東細胞様株細胞でも同様の検討行い、RAによるコラーゲン産生の抑制を観察した。 in vivoの実験では、四塩化炭素投与によりラット硬変肝を作成し、その課程でRAを併用し線維化への影響を検討した。一連の研究では、RAの併用により肝臓の線維化は組織学的には抑制されたが、生化学的には明確でなかった。これは、個々の動物での薬剤に対する感受性が異なるためと考えられ、動物モデルに関してはさらに検討の必要がある。 本実験から、RAはコラーゲン・コラゲナーゼともに発現を抑制する傾向があり、最終的なin vivoでの線維化抑制に寄与し得るかは結論ずけられなかった。今後、肝線維化過程での肝細胞、伊東細胞それぞれにおけるコラーゲンおよびコラゲナーゼの発現の割合が、RAおよびその誘導体により線維化抑制の方向にコントロールできるか検討する。
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