研究概要 |
はじめに外科的に摘出された健常肺組織および肺癌組織からRNAを抽出し、腫瘍壊死因子受容体(Tumor Necrosis Factor Receptor, TNFR)の遺伝子発現レベルをノーザンハイブリダイゼーション法にて検討した。健常肺組織は、I型およびII型TNFR遺伝子の両者を発現していたが、肺癌組織では、I型のTNFR遺伝子の発現が優位であった。次に培養肺上皮細胞由来株(A594)について検討してみると、A549細胞はI型TNFR遺伝子のみを発現していた。そこで肺上皮細胞のモデルとして、A594細胞を用いI型TNFR遺伝子発現のレベルを修飾する因子について検討した。 phorbol myristate acetate(PMA,80 nM)刺激ではI型TNFR遺伝子発現レベルは時間依存性に増加したが、腫瘍壊死因子(TNF,1mug/ml)で刺激すると、I型TNFR遺伝子の発現は逆に時間依存性に低下した。過酸化水素(H_2O_2,100nM)の刺激は遺伝子発現レベルに影響を及ぼさなかった。^<129>I-TNF binding assayを用い、細胞表面のTNFRの発現レベルを検討すると、PMAの刺激24時間後では増加、TNFの刺激では減少しており、これは遺伝子発現の調節レベルの結果と一致していた。H_2O_2刺激では、^<129>I-TNFの結合能に変化はなかった。A549細胞の培養上清中に、無刺激の場合でも可溶性TNFRが検出されたが、PMA,TNFおよびH_2O_2の刺激後すべてにおいて可溶性受容体は増加していた。I型TNFRの発現は、遺伝子発現レベルにおいても調節されうること、可溶性TNFRの遊離は遺伝子発現の調節と異なる幾序を介して行われていることが示された。
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