特発性間質性肺炎(IPF)の急性期あるいは活動期では、気管支肺胞洗浄液(BALF)の総細胞数、リンパ球比率が増大していた。CD3+リンパ球が増加しており、Tリンパ球の増加を示唆した。定説と異なり、CD4+リンパ球とCD8+リンパ球の比は低値であり、CD8+リンパ球が増大していた。CD8+S6F1+もしくはCD8+CD11a+リンパ球を細胞障害性Tリンパ球(CTL)として測定したが、CTLの比率は著増していた。発病より、やや時間が経過したIPF症例では、急性期症例よりもBALF中のリンパ球比率が低下し、CD4+/CD8+比の低下が著明ではなく、CTL比率の著増を認めなかった。IPF症例の急性期にCD8+リンパ球が増加し、そのCTL分画が著増していた観察結果は、従来特発性とされている間質性肺炎で、ウイルスなどの外的抗原に対する免疫応答がその発症に関与している症例が存在する可能性を示すものであると考えた。また、膠原病のひとつである多発性筋炎の症例でも、CTL分画の著増が見られた。さらに、gammadelta陽性リンパ球は0.7%〜3.4%、ナチュラルキラーリンパ球は0.7%〜19.9%と少なかった。CD4+CD45RA+リンパ球は0.2%〜0.3%、CD4+CD45RO+リンパ球は5.9%〜12.0%であり、これらの臨床的意義にはさらに検討が必要であると考えた。一方、サルコイドーシスでは、BALF中のCD4+/CD8+リンパ球比は増大しており、肺間質性炎症の発症機序としての免疫応答が特発性間質性肺のそれと異なることが示唆された。
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