研究概要 |
1.アルツハイマー病脳におけるアミロイド線維形成を観察する目的で,そのコアとなる分子の候補としてヘパラン硫酸を考え,その局在をmonoclonal抗体(HepSS-1:mouse IgM Kappa,抗ヘパラン硫酸マウスモノクローナル抗体)を用いて免疫組織化学的に同定した.ヘパラン硫酸様免疫活性は老人斑のみでなく,神経原線維変化にも確認できた.さらにアミロイド線維形成の場として実験を進めるため,ヘパラン硫酸をニトロセルロース膜等に固着させることを検討したが,ヘパラン硫酸を免疫組織化学的には同定できなかった.そこでアミロイド線維形成の場としてのヘパラン硫酸を得るために,脳以外でのヘパラン硫酸の局在免疫組織科学的に検討した.牛の新鮮死後組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、30ミクロンの浮遊切片を作製し,免疫組織化学的に染色した.腎糸球体の基底膜、大血管の中膜等に比較的大量のヘパラン硫酸様免疫活性を見出したが,肝臓,脾臓には明らかな免疫活性は確認できなかった. 2.一方でアミロイド蛋白の線維形成や凝集を見るためにamyloidgenic fragmentの精製を試みた.ヒト髄液,培養細胞上清,アミロイド前駆体蛋白の717残基に点突然変異を有するアルツハイマー病患者のリンパ球をtransfectした培養上清等にamyloidgenic fragmentの存在が期待されるため,これらを様々な方法で精製したのちSDS-PAGEに展開しベータプロテインの存在を確認しようとしたが,通常のWestern blotではこれらのfragmentの存在は確認できなかった. 今後はベータプロテインの蛋白化学的な同定法を確立したうえで,ペプチドの合成を蛋白レベルあるいは遺伝子をもちいた手法を駆使して行い,ベータプロテインの沈着機序を明らかにすることを目標とする.
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