研究課題/領域番号 |
05770447
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研究機関 | (財)東京都老人総合研究所 |
研究代表者 |
石井 賢二 (財)東京都老人総合研究所, ポジトロン医学研究部門, 助手 (10231135)
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研究分担者 |
織田 圭一 (財)東京都老人総合研究所, ポジトロン医学研究部門, 助手 (70224235)
外山 比南子 (財)東京都老人総合研究所, ポジトロン医学研究部門, 主任研究員 (50180188)
千田 道雄 (財)東京都老人総合研究所, ポジトロン医学研究部門, 副参事研究員 (00216558)
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キーワード | ポジトロンCT / 脳賦活検査法 / 脳血流 / 高次的脳機能障害 / 聴覚失認 |
研究概要 |
【はじめに】本研究ではこれまで失語症の症例を対象に、安静時検査では明らかでない変化を、言語課題施行時の脳血流量変化をみることによりとらえることができることを示してきた。本年度は聴覚失認の症例を対象に、PET賦活検査法を用いて皮質性聴覚認知障害の成立機序について検討した。 【方法】臨床的に聴覚失認と診断された2症例(両側側頭葉損傷例)と正常人4例に対し、安静時とクリック音聴取時にそれぞれ、酸素-15標識水(H_2^<15>O)ボーラス静注とポジトロンCTによる局所脳血流量測定を施行し、6.5mm間隔14スライスの体軸断層画像を作成した。全脳血量を標準化した後、課題時の画像から安静時の画像を差し引いたサブトラクション画像を作成し、これを同一人のMRIと3次元的に重ね合わせ、課題によって生じた聴皮質の血流変化について検討した。 【結果】正常人ではクリニック音刺激により横側頭回に限局して血流増加を認めた。一部の正常人では、内側膝状体の血流増加も認められた。聴覚失認の症例でも両側の横側頭回で血流増加を認めた。その程度は正常人に比べると小さい反面、血流の増加した範囲は横側頭回に限局せず聴覚連合野に及び、正常人よりも広範であった。 【考察】聴覚失認は要素的聴力は保たれて音の存在認知はできるが、音の性状認知が困難な病態である。音の存在認知に聴皮質が必要かどうかはこれまでのところよくわかっていないが、今回調べた症例では、いずれも両側の一次聴覚領への入力が不十分ながらもあることがPET賦活検査で確認された。聴覚失認の病態生理学的背景として、聴覚領への入力が不十分であるために音の存在認知はできるが、性状認知のための入力情報の処理が十分行えないという機序が推定された。PET賦活検査法はこのような高次脳機能障害の病態解析に有用と考えられる。
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