研究概要 |
1.ズリ応力負荷時の血小板内カルシウムイオン濃度の変化 カルシウムイオン感受性の蛍光色素(Indo-1)を用いて血小板内カルシウムイオン濃度を計測した。高ズリ応力(108 dynes/cm^2)負荷時には凝集とともに血小板内カルイムイオン濃度は250±49nM上昇した。低ズリ応力(12 dynes/cm^2)負荷時には血小板凝集、カルイウムイオン濃度の変化、いずれも認められなかった(Ikeda Y,et al.Thromb Haemost 69:496,1993,Goto S,et al.Am Heart J投稿中)。 2.少量エピネフリンの効果 (1)高ズリ応力負荷時 ズリ応力負荷に先立ち、血小板浮遊液に、終濃度が10ng/mlとなるように少量のエピネフリンを添加した。高ズリ応力負荷による血小板の凝集は添加前の49±10%から、エピネフリン添加後には70±7%に増加した。250±49nMであったズリ応力負荷後の細胞内カルシウムイオン濃度上昇も、エピネフリン添加後には404±134nMに増加した。ズリ応力による凝集、細胞内カルシウムイオン濃度変化ともにalpha2受容体阻害薬であるヨヒンビンにより用量依存性に抑制された。またvon Willebrand factor(vWF)と血小板膜糖蛋白GPIbの結合を抑制する抗体(nmc-4またはGVR20-5)により凝集、カルシウム濃度変化ともに完全に抑制された。 (2)低ズリ応力負荷時 エピネフリン添加前にはズリ応力負荷による凝集、細胞内カルシウムイオン濃度変化ともに認められなかったが、エピネフリン添加後には66±17%の血小板凝集を認めた。この際細胞内カルシウムイオン濃度も50±17nM上昇した。エピネフリン存在下の、低ズリ応力誘発血小板凝集、細胞内カルシウムイオン濃度変化ともにヨヒンビンにより用量依存性に抑制された。またvWFとGPIbの結合を抑制する抗体により、凝集、カルシウムイオン濃度変化ともにほぼ完全に抑制されたことから、エピネフリン存在下では、低ズリ応力負荷時にも、vWFとGPIbのinteractionにより仲介される血小板の活性化、血小板凝集が起こることが示唆された。エピネフリン刺激によりGPIbの高次構造が変化し、ズリ応力に対する感受性が高くなることがその原因と推論された(Goto S,et al.Am Heart J投稿中)。
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