圧反射に対する高位中枢からのゆらぎの影響を定量化するためには動物実験を行なった。イヌの入手が困難であったことから実験動物をウサギに変更した。ウレタン・alpha-クロラロース麻酔下で、反射ループを開くために頚部において両側の頚動脈洞を他の血管系から分離し、両側の大動脈減圧神経および迷走神経は切断した。両側の頚動脈洞に接続したチューブをリニアポンプに接続し、頚動脈圧と圧コマンドの差でポンプを駆動してサーボコントロールした。これにより頚動脈洞圧をコンピューターの指令により自在に制御できるシステムを作成した。ウサギの胸部を正中で開き左側の心臓交感神経の1本を周囲の組織から剥離切断した。切断した中枢部より神経活動を記録した。神経活動を整流後、平滑化(遮断周波数30Hz)して定量化し、フーリエ解析して交感神経活動のスペクトル分布を求めた。頚動脈洞圧が一定の状態では0.8〜1Hzにピークをもつスペクトルが得られた。一定に保つ圧を低下させるとこのピークは圧の変化にほぼ比例して増加した。しかしピークの周波数自体が圧の低下に応じてやや高い周波数に移動した。これが時間経過に伴う変化である可能性は残るが、圧反射弓への入力が中枢のゆらぎを変化させている可能性も否定できない。頚動脈に1Hzの正弦波を加えると、中枢のゆらぎである0.8Hzと正弦波の周波数(1Hz)およびその和の1.8Hzにピークを認めたが差の0.2Hzのピークは明かではなかった。装置の不完全さ(サーボゲインの低さ)から入力した正弦波が歪んでおり正確な解析を困難にしているため、今後は適応型制御を用いて歪みの少ない正弦波入力が可能であるシステムを開発する予定である。その上で中枢のゆらぎ自体を変化させた場合の変化について、左右の頚動脈に別々の信号を入力したときの変化についても検討する予定である。
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