研究概要 |
IL-12は,NK細胞やキラーT細胞(CTL)などの抗腫瘍免疫細胞の機能を増強させることから,悪性腫瘍に体する免疫療法への臨床応用が期待されている.しかし,IL-12の小児悪性腫瘍における抗腫瘍エフェクター機構増強作用については必ずしも明らかになっていない.そこで,本年度は以下の点につき研究を行った. 1.小児期におけるIL-12のNK細胞機能,LAK活性,リンパ球増殖反応,サイトカイン(IFN-gamma,TNF-alpha)産生能への影響を検討した.その結果,小児期においてもNK活性に対する強い増強作用が認められ,特に新生児期においてIL-2以上の増強がみられた.この増強作用をsigle-cell levelで解析すると,IL-12はNK細胞の結合能と溶解能を増強し,新生児期には接着分子(CD2,CD11a,CD11c,CD54,CD56)の発現が成人と比較してより強く増強された.しかし,IL-2によって誘導されたLAK活性には成人と同様に抑制的に作用した.また,成人と同様に,IL-12は活性化NK細胞およびT細胞に対して増殖を刺激したが,活性化NK細胞に対するIL-2の増殖刺激作用を抑制した.IFN-gammaおよびTNF-alpha産生に対するIL-12の作用は促進的であったが,新生児において強いIFN-gamma産生を認めたのが注目された. 2.小児期のgammadeltaT細胞への影響を検討した.バ-キットリンパ腫由来のDaudi細胞を刺激細胞に用いると,新生児期と乳児期の末梢血中にはほとんど検出されないgammadeltaT細胞が誘導されるが,このgammadeltaT細胞へのIL-12の作用は,NK細胞に対するものと同様で,細胞傷害能と増殖反応への増強作用を認めた. 3.小児白血病においてIL-12のNK活性増強作用を検討した.小児白血病ではNK活性の長期間にわたる低下がみられるが,IL-12はこの活性を強く増強し,抗腫瘍免疫機能を増強することが示された.しかし,IL-2によって誘導されるLAK活性には抑制的に作用し,この点は今後の検討課題と思われる.
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