研究概要 |
髭毛包組織の上皮系細胞である外毛根鞘細胞(ORSC)が、培養系においても男性ホルモン標的組織としての性格を保持しているかどうかを調べるため、髭の外毛根鞘細胞のテストステロン(T)の代謝を表皮細胞(EK)と比較検討した。さらに、分化の程度による影響についても検討した。 まず各々の細胞を、無血清培地(KGM)で培養し、T代謝のタイムコースを調べた。^3HでラベルしたTとインキュベートし、メディウムよりステロイドを抽出し、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーにて代謝産物を定量分析した。その結果、どちらの細胞でもアンドロステンジオン(△^4)が主たる代謝産物であり4時間まで直線的に増加した後、アンドロスタンダイオン(AAD)が増加した。強いアンドロゲン活性を示すダイハイドロテストステロン(DHT)は8時間までは上昇し、以後は低下したが、その後アンドロステロン(A-rone)が上昇した。次に培養細胞を増殖期の単層のものと、10%牛胎児血清を加えたメディウム中で10日間培養し分化重層させたものの2群に分けて、Tの代謝実験を行ったところ、いずれも条件でもORSC、EKともにDHTは少なく、主な代謝産物は、△^4であった。しかし重層させるとAAD,△^4,A-roneが著明に増加した。5alpha-reductase活性と17beta-HSD活性を比較検討したところ、5alpha-reductase活性はいずれの条件でも両細胞間に差はなく、重層させた場合は単層の約7-8倍となった。17beta-HSD活性は、単層ではORSC、EKの間に差はなく重層させるとORSCは約5倍、EKは約3倍になった。 以上の結果より両細胞ともに活発に男性ホルモンを代謝するが、分化度により代謝酵素の誘導のされ方が違うこと、単層培養のORSC、EKではTは殆どが△^4に代謝されることが明らかとった。よって髭のORSCは培養条件下の男性ホルモン代謝の面からは、男性ホルモン標的組織としての性格は有していないという結論となった。今後毛母細胞についても検討が必要と考える。
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