研究概要 |
男性ホルモンは、皮脂腺の機能を亢進し、皮脂分泌を増加させざ瘡の重要な基礎条件である脂漏状態を作り上げると考えられている。またその作用機序としては、男性ホルモンの一つであるテストステロン(以下Tと略す)が、皮脂腺に存在する5-アルファー還元酵素により5-アルファーダイハイドロテストステロン(以下DHTと略す)に代謝され、このDHTが皮脂腺の男性ホルモン受容体と結合して、作用を発現すると推測されている。近年われわれは、ヒトの顔面より分離した皮脂腺の組織片培養に成功し、得られた培養脂腺細胞の増殖が、T,DHT各々により促進されることを報告した。そこで今回われわれは、この培養脂腺細胞にT,DHT各々を作用させることにより、in vitroにおいてざ瘡モデルを作成し、ざ瘡治療におけるスピロノラクトンの奏効機序について、培養脂腺細胞の増殖を指標として検討した。まず、顔面の皮脂腺より得られた培養脂腺細胞の増殖に及ぼすT,DHT各々の影響を検討し、T,DHT各々が濃度依存性に、有意に培養脂腺細胞の増殖を促進することを、さらにその作用は、DHTにおいてより強力であることを確認した。次に培養脂腺細胞にT,DHT各々とスピロノラクトンを同時に作用させて、スピロノラクトンのT,DHT各々による培養脂腺細胞への増殖促進作用に対する影響を検討した。その結果、スピロノラクトンは濃度依存性に、有意にT,DHT各々による培養脂腺細胞への増殖促進作用を抑制することが判明した。またスピロノラクトンは単独でも、培養脂腺細胞の増殖を濃度依存性に有意に抑制した。以上により、スピロノラクトンはざ瘡治療において、男性ホルモンによる皮脂腺の機能亢進に対する拮抗作用により、またそれ自身の皮脂腺に対する直接作用により奏効するものと考えられた。
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