研究概要 |
動物実験:アドリアマイシン(ADM)投与群の心筋へのMIBG集積は、コントロール群に比して低値をとる傾向にあった。また、スペクトロスコピーでは、ADM投与群で解糖系代謝産物であるalanine及びlactateが高値を示す傾向にあったが、脂肪酸代謝の指標であるfree carnitineは差が認められなかった。また、ADM投与群で心/体重比は高値を示す傾向にあり、組織学的には心筋細胞の肥大がみられたが、ADMによる心筋障害でみられるとされている空胞変性は目立たなかった。心機能測定はできなかったが、以上の結果から、組織学的変化が比較的軽度な時期において、脂肪酸代謝は保たれているが、交感神経機能及び解糖系の障害が既におきていることが示唆された。今後、動物の数を増やし、結果をより確かなものとすると共に、ADM投与量との関係についての検討も行う予定である。 臨床的検討:ADMによる化学療法施行予定あるいは施行後の患者15例を対象にMIBGを用いた心筋シンチグラフィ及び心プールシンチグラフィを施行し、ADMの累積投与量と左室駆出率(LVEF)、心筋へのMIBG集積、及び洗い出し(WR)との比較を行った。ADMの検査時における累積投与量とLVEFはr=-0.87,P<0.05の有意な負の相関が得られた。しかし、MIBGの心筋への集積は負の相関、WRは正の相関を認める傾向にはあるもののばらつきが大きく有意ではなかった。また、LVEFが明らかに低下しているにも関わらず、MIBGの集積、及びWRが正常である例が見られた。逆に、LVEFが正常でもMIBGの集積が低下し、WRが亢進していた例もみられた。LVEFが正常で、MIBGは異常である例を追跡するとLVEFがMIBGに遅れて低下してくる可能性は否定できず、今後、症例を増やすと共に、個々の症例を長期にわたり追跡する予定である。
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