昨年度より今年度にかけて、リン化学シフト画像法(^<31>P-DCSI)を用いて、双極性障害患者23名および正常対照者22名の左右前頭葉におけるリン代謝を測定した。 今年度は、測定法の精度を検討するため、正常対照者8名において、各2回の測定を行って、測定誤差について検討した結果、測定間誤差は、クレアチンリン酸については10%以下であり、リン酸モノエステルについては25%以下であることがわかった。更に、クレアチンリン酸溶液のファントムを用いて、コイルの感度分布についても検討した結果、コイルの感度はほぼ左右対称であることがわかった。 これらの検討を元に、双極性障害患者での結果を分析した結果、右前頭葉では、躁状態、うつ状態、寛解期の全てにおいてクレアチンリン酸が低下していること、うつ状態のみで、左前頭葉のクレアチンリン酸が低下していることを明らかにした。左前頭部でのクレアチンリン酸は、ハミルトンうつ病評価尺度と逆相関しており、右前頭部のクレアチンリン酸低下は、発症年齢が若い患者のみで見られた。これらの結果から、左前頭葉のクレアチンリン酸低下は抑うつ症状に、右前頭葉のクレアチンリン酸低下は双極性障害で素因的に見られる右半球機能障害を反映すると思われた。 今後は、このクレアチンリン酸低下の原因を明らかにするため、^1H-MRSによる脳内クレアチン濃度の測定、ミトコンドリア異常の検索などを併せて行っていく予定である。
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