研究概要 |
ラットにamitriptyline,desipramine,trazodone等の抗うつ薬、対照群として生理食塩水を3日、7日、21日間連続腹腔内投与し、大脳を摘出した。それぞれよりtubulinと大脳皮質膜標品を精製し、以下の実験を行った。 1)tubulinはGppNHpで重合させることによりtubulin-GppNHp結合型(Tu-GppNHp)を得た。対照群から調製した膜標品に各群より得られたTu-GppNHpを添加することにより、アデニル酸シクラーゼ(AC)活性は容量依存性に上昇した。amitriptyline群より得られたTu-GppNHp刺激AC活性は3日、7日投与群では対照群のそれと比べ低値を示した。これに対し21日間の慢性投与群では対照群と比較し高値を示した。またTu-GppNHp存在下でisoproterenol刺激AC活性を測定したが充分なAC活性の上昇は認めなかった。以上のような変化はdesipramine,trazodone各投与群では認められなかった。 2)tubulinに対するpolyclonal antibodyを用いたWestern blottingによる膜内のtubulin量の検討を行ったが、抗うつ剤投与群と対照群間に変化は認めなかった。 tubulinからG蛋白質へのguanine nucleotide(GN)の転移反応はGiについてのみ確認されている。我々は1)で示した変化がtubulinからGsへのGNの転移反応によるものであることを確認するため、AAGTPを用いて検討を行った。その結果AC抑制条件下[1mM MgCl2/23℃]では転移反応は確認されなかったが、AC促進性条件下[5mM MgCl2/30℃]ではtubulinと結合していた[^<32>P]AAGTPが膜標品中のGsalphaへ転移しており、tubulinからGsへのGNの転移が確認された。抗うつ剤の慢性投与がこの転移反応に与える影響については今後の検討課題である。
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