研究概要 |
1)膵beta細胞と同様にグルコースによって発現が誘導されるグルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)遺伝子のプロモーター活性の調節機構を解析した。ヒトGIP遺伝子のプロモーターにも、ヒトインスリン遺伝子と同様に複数のcAMP反応性塩基配列(CRE)が存在し、プロモーター活性やcAMP反応性がc-JUNによって抑制された。従って、グルコース反応性に発現するGIP遺伝子とインスリン遺伝子には、類似した発現調節メカニズムが存在することが予想された(Someyea,Y.et al.FEBS Lett.1993)。 2)polymerase chain reaction(PCR)法を用いてインスリン遺伝子の各CREを含む4種類のDNAフラグメントを作成し、大腸菌を用いて合成、精製したCRE-BPI蛋白を用いてgel shift assayを行い、これらのCREを含むDNAフラグメントがすべてCRE-BPI蛋白と結合することを確認した。このgel shift assayに大腸菌を用いて合成・精製したc-Jun蛋白を加えたところ、CREを含むDNAフラグメントとCRE-BPI蛋白との結合が抑制された。しかし、ソマトスタチン遺伝子のCREを含むDNAフラグメントとCRE-BPI蛋白との結合は、c-Jun蛋白を加えても抑制されないことがgel shift assayにより明らかとなった。従って、c-Junによるインスリン遺伝子発現やcAMP反応性の抑制には、c-JunによるCRE-BPI蛋白とCREの結合の阻害が関与し、さらにその阻害にはCREに隣接するDNA塩基配列が重要であることが示唆された。
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