研究概要 |
私共は、高糖濃度条件培養メサンギウム細胞において、心房性ナトリウム利尿ペプチド応答性の増加およびアンジオテンシンII応答性の低下が認められることを報告し、これら機能異常が糖尿病性腎症の発症に関与している可能性を示した。しかし、生体においては他の内皮あるいは上皮細胞と共存しており、それらの相互作用について検討する必要がある。 そこで本研究は、メサンギウム細胞(rat mesangial cell,MC)を正常(5.6mM glucose)あるいは高糖濃度(27.8mM glucose)条件下で5日間培養後、正常糖蜜度で培養した牛大動脈内皮細胞(bovine aortic endothelial cell,BAEC)とco-incubation系に置き、内皮質細胞側をブラジキニンにより刺激した後、メサンギウム細胞内cGMP産生を測定することにより、高密濃度条件下における内皮細胞のEDRF産生生能およびメサンギウム細胞のEDRF応答性の変異を検討した。ついで、メサンギウム細胞のEDRF応答性をさらに詳細に検討するため、高密濃度条件下で培養したメサンギウム細胞を用い、ニトロプルシドナトリウム塩(sodiumu nitroprussede,SNP)刺激時の可溶性グアニル酸シクラーゼ(SGC)活性を測定した。 高密濃度(27.8mM)条件下で培養したMCと正常糖濃度(5.6mM)条件下で培養したBAECをco-incubationし、ブラジキニン(1muM,10分)で刺激時のMC内cGMP含量は、68.2±27.7pmol/mg proteinであり、正常糖濃度(5.6mM)条件での値67.6±10.1pmo1/mg proteinとの差を認めなかった。 SNP刺激にて、正常糖濃度(5.6mM)条件下でSGC活性は約2倍に増加した。また、糖濃度16.7mMおよび27.8mMにおいても、SNP刺激時のSGC活性は約2倍であり、正常糖濃度条件下と差を認めなかった。 以上の結果より、メサンギウム細胞におけるEDRF-SGG-cGMP経路が糖尿病性腎症に認められる腎血行動態の異常に関与している可能性は否定的であると考えられた。ただし、今回の検討では、メサンギウム細胞のみを高糖条件下にて培養しており、高糖濃度条件の内皮細胞からのEDRF産性あるいは分解に関する変化については今後の課題である。
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