研究概要 |
下垂体に発現される成長ホルモン(GH)受容体(GHR)の意義を検討する目的で、GHRが発現される下垂体細胞の同定を行った。ウイスター系成熟雄ラットをパラホルムアルデヒドで灌流固定し、下垂体前葉の凍結切片を作製し、cRNAプローブを用いて、GHRmRNAとGHmRNAに対するin-situ hybridizati0n(ISH)を行った。GHRmRNAは下垂体前葉の外側領域に多く観察され、GHmRNA含有細胞の分布と一致していた。さらに厚さ3mumの連続切片を作製し、GHRmRNAとGHmRNAに対するISHを隣接切片で行い比較検討したところ、GHRmRNAとGHmRNAを共有する細胞が認められた。以上より、下垂体前葉GH産生細胞にはGHRmRNAが存在し、GHは下垂体のGH産生細胞に直接作用することが示唆された。この成績は第66回日本内分泌学術総会Il-ll)で報告した。 またGHは視床下部のソマトスタチン(SS)やGH放出促進因子(GRF)に作用し、中枢神経を介して自らの分泌を調節する可能性が指摘されている。この点を検討する目的で、ISHを用いてGHRmRNAの視床下部内での局在と、GHのSSやGRF遺伝子発現に及ぼす効果について検討した。GHRmRNAは成熟雄ラットの視床下部弓状核、室周囲核、室傍核、基底核、視索上核に認められた。GHRmRNAは、室周囲核内ではSS細胞の分布と一致し、弓状核内ではSS細胞の分布する背内側領域やGRF細胞の分布する腹外側領域に認められた。また成熟雄ラットに下垂体摘除術を施すと10日後には視床下部室周囲核と弓状核のSSmRNA量は有意に低下し、弓状核GRFmRNA量は有意に増加していた。下垂体摘除ラットにGH(0.33mg)を12時間毎に5日間皮下投与すると、SSmRNAとGRFmRNA量は正常対照ラットと同量にまで回復していた。以上より、GHは視床下部室周囲核や弓状核に直接作用し、SSやGRFの遺伝子発現を調節する可能性が示唆された(J Neuroendo,1993,5,691-696)。
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