白血病細胞株HL-60細胞は1、25(OH)_2D_3により単球系細胞に分化誘導される。我々はこの分化において癌遺伝子のc-myc及び1、25(OH)_2D_3receptorの発現が、分化誘導や細胞増殖の抑制にどう関係しているかについてHL-60細胞の1、25(OH)_2D_3感受性株、耐性株を用いて1、25(OH)_2D_3処理した際の1、25(OH)_2D_3receptor、c-mycmRNAの発現を検討した。その結果、1、25(OH)_2D_3receptor mRNAの発現は、1、25(OH)_2D_3投与により1、25(OH)_2D_3感受性株においてのみ、分化に伴い一過性に上昇したのに対し、c-mycmRNAの発現は分化よりもむしろ増殖の抑制に伴い減少していた。 このデータは1、25(OH)_2D_3receptorと分化、c-mycと増殖の密接な関係を示唆させるものであると思われる。又、HL-60細胞を1、25(OH)_2D_3や顆粒球系細胞への分化誘導物質であるRetinoic acid(RA)、DMSO、G-CSFを作用させた際に分化のマーカー1つであるAlkaliphosphatase(ALP)の活性を観察したところ、G-CSF投与によりALPの活性の軽度の上昇が認められ、さらにRAを投与するとその効果の相乗作用が認められた。 G-CSF以外の分化誘導物質のみではALP活性の上昇は認められず、このALP活性はprotein kinaseC阻害剤の投与により抑制された。 又、RAとG-CSFによるALP活性の上昇はG-CSFを先に添加して3日間培養した後にRAを加えた際には認められず、RAを先に作用させた時にはみとめられた。 以上、細胞の分化のメカニズムについてその一端を解明することができた。
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