研究概要 |
発作性夜間血色素尿症素(PNH)における血球の異常は、glycosyl-phosphatidylinositol(GPI)アンカー合成不全によるGPIアンカー膜蛋白欠損であることが我々を含む複数のグループから示された。PNHでは補体制御因子をはじめ少なくとも14種類の膜蛋白が欠損しており、その欠損蛋白が有する機能の欠落が細胞の機能異常やひいては臨床症状として現われてくるものと考えられる。本研究では致死的合併症である血栓症のメカニズムを解明するために、異常血球と血管内皮障害との関連を想定しPNH5症例に関し以下の点を検討した。まず個々の症例でGPIアンカー膜蛋白が欠損した異常血球細胞の割合をflowcytometryで求め、3症例が35%-80%と比較的多く、2症例が5%以下と少ないことが確認できた。次に、血球側の解析として血小板のトロンビン、コラーゲン、ADPに対する凝集能や粘着能について検討したが、PNH異常クローンの割合に関係なく正常の反応性であり、血小板機能は障害されていなかった。また好中球に関しては凝集脳、活性酸素産生能を検討したが、前者は正常に比べ低下し、後者はむしろ亢進する傾向にあった。特に活性酸素は血栓形成の場である血管内皮障害の一因となるため、これを反映すると考えられる血清中のt-PA,PAI,t-PA-PAIcomplexの測定をおこなったが有意な上昇は認められなかった。今回、単球の機能異常については症例の細胞採取量不足で十分な解析はなされていない。以上より血栓形成に血小板機能異常よりも白血球機能異常が関与している可能性が示唆されたが白血球異常と血管内皮障害との関係はin vivoでは証明が困難であり、in vitroの系での検討が今後必要であると考えられた。
|