研究概要 |
インターフェロン(IFN)‐alphaとall trans‐レチノイン酸(RA)による前骨髄性白血病(APL)細胞の文化誘導における2':5'オリゴアデニル酸(2‐5A)合成酵素とp68タンパク質キナーゼ(PKR)の関与について調べるため、今年度はAPL細胞株HL-60を用いて研究を行った。HL-60細胞にIFN‐alpha(10,100,1000U/ml)、RA(0.01,0.1,1muM)を単独もしくは同時に培養液に1、6、24、72時間加えた後7日間まで培養を行った。IFN‐alpha、RA単独でHL-60細胞の顆粒球系への分化誘導と増殖の抑制が認められた。そしてこれらの作用は両者を併用することによって相乗的に増強された。この増強は単独では明らかな作用を示さない比較的低能度のRAによっても認められたため、IFNの作用をRAが増強している可能性が示唆された。HL-60細胞もこれらで処理した際の2‐5A合成酵素、PKR mRNA経時的変化をNorthern blotting法にて追跡した。いずれのmRNAもIFN‐alpha処理により早期に上昇し3日目まで高いレベルを維持したが、RAでは明らかな上昇は認めなかった。IFN‐alphaとRAを併用することによって、2‐5A合成酵素mRNAの誘導は著明に増強された。PKR mRNAに関しては、この増強は明らかではなかった。これらのことから、HL-60細胞において、RAはIFN‐alphaによる2‐5A合成酵素誘導を増強することによってIFN‐alphaによる増殖抑制、分化誘導を相乗的に増強している可能性が考えられた。HL-60細胞をこれらで処理した後凍結保存しており、今後はこれらについて、酵素活性の測定を行いmRNAの上昇が酵素レベルで反映されているか調べるとともに、mRNA上昇の機序を調べるために、2‐5A合成酵素遺伝子のプロモーター領域に存在するISRE(IFN‐stimulated response element)を用いてEMSA(electro‐mobility shift assay)を行う予定である。
|