この研究の目的は、肝細胞増殖因子(HGF)の腎臓への作用をみるために、その受容体であるC-metの動行を腎臓で調べることにあった。C-metの発現の調節をみるためにin vitro系を利用した。イヌの尿細管細胞のcell lineであるMDCK細胞はHGFによってその遊走が亢められ、またコラーゲンゲル内でHGFによって管腔形成をすることが知られており、C-metの研究にはよい系と考えられた。我々が以前、ラット腎臓でのC-met発現を調べるためにクローニングしたラットのC-met(BBRC187:1454)を用いてノーザンブロット法でC-metの発現を検討したところ、MDCK細胞では7Kbと9Kbの2つのバンドがみとめられた。8-bromo-cAMP(1mM)やforskolin(50muM)でC-metの発現は増加したが、PMA(0.1muM)で抑制された(いずれも6時間以内)。これはC-metの発現がPKAやPKCによるリン酸化反応で調節されていることを示唆している。一方、細胞間隙を疎にするために短時間のトリプシン処理をおこなうと6時間後にC-metの発現は増加した。 また、片腎摘でC-metの発現が6時間以内に増加することを報告したが(BBRC187:1454)これが同時に増加するHGFによるかどうかを見る目的でHGF(5ng/g体重)を正常ラットに腹腔内投与したが、C-metの発現に変化をみとめなかった。よってリガンドであるHGF以外の作用で片腎摘時にC-metが増加すると考えられる。
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